「あら、何かしら」
道場の門を開けながら、薫は呟いた。
どうやら道場の門の隙間に
挟んであった
ものらしい。
「手紙かしら」
拾い上げて見返して
薫は小さく首を傾げる。
くらり。
「・・・・!?」
訳も無く眩んだ視界に、
薫はまたも首を傾げた。
━━━この白さ 目に痛い━━━
つんと痛んだ目を押さえると、
滲んだ涙が少しだけしみる。
「変ねぇ。宛名も無ければ差出人も・・・」
そう言いつつも薫の両手は
迷うことなく動いていた。
かさかさと音をさせながら
白い手紙が広げられる。
「一体何なのかしら。たったこれだけ?」
広げた手紙をまじまじと見つめ、
薫は眉をひそめた。
ここまでおいで、君を待ってる |
「おはよう、弥彦」
「おお。おはよ。なんだ、道場の門でも開けてきたのか?」
「そう。外の空気を吸うついでにね」
「その手に持ってるのは?」
「ああ、これ? 門の間に挟んであった手紙みたいなんだけど・・」
「手紙?」
「おかしなことに宛名も差出人の名前も無いのよ」
「はぁ?なんだそりゃ」
「しかも書いてあるのはたった一行だけだし。それもよく意味が分からないの」
「誰かのいたずらじゃねーのか?」
「うーん・・そうかもしれない」
「心当たりは無いんだろ?」
「ええ、無いわ」